なぜカナダは「留学生を無制限に受け入れる国」から変わったのか?

かつてカナダは、アメリカやイギリスと比べて留学ビザを取得しやすく、卒業後の就労や移住の可能性もあることから、世界中の学生から人気を集めていました。

ところが現在、カナダの留学生政策は大きく変わっています。

「留学生を増やす」政策から、「受け入れ人数を管理し、制度を適正化する」政策へ。

その転換が本格的に始まったのが2024年です。

では、なぜカナダ政府はここまで大きな規制に踏み切ったのでしょうか?


留学生が急増したカナダで何が起きたのか?

カナダでは2019年から2023年にかけて、Study Permit(就学許可)の申請数が121%も増加しました。

留学生の急増に伴い、カナダ国内では住宅、医療、教育、その他の公共サービスへの負担が問題として取り上げられるようになりました。

特にトロント、バンクーバーなどの大都市では、住宅不足や家賃の上昇が大きな社会問題となりました。

カナダ政府自身も、国際学生プログラムの規模を持続可能な水準へ戻す必要があると判断し、2024年から受け入れ人数の管理を開始しました。


🏠 住宅問題も規制強化の大きな理由

留学生だけが住宅価格高騰の原因というわけではありません。

しかし、人口増加に対して住宅供給が追いつかない状況の中で、留学生を含む一時滞在者の急増が住宅市場への圧力を強めていることが問題視されました。

カナダ政府は、2024年に一時滞在者の人口をカナダ全人口の6.5%から、2026年までに5%へ引き下げる方針を打ち出しました。

その一環として、

  • 国際学生の受け入れ数の制限
  • 一部の就労許可の条件変更
  • 留学生の家族に対する就労許可の制限
  • 卒業後就労許可(PGWP)の条件変更

など、複数の政策が導入されています。


🎓 「どんな学校でも留学できる」時代から変化

今回の規制強化では、単に留学生の人数を減らすだけではありません。

留学生を受け入れる教育機関やプログラムについても、より厳格な管理が行われるようになりました。

例えば、Study Permit申請では、多くの学生について、州・準州が発行する

PAL/TAL(Provincial/Territorial Attestation Letter)

が必要になりました。

これは、各州・準州が設定された留学生受け入れ枠の中で、学生を受け入れることを確認する仕組みです。

つまり、学校から入学許可証をもらえば、それだけで留学ビザを申請できるという時代ではなくなっています。


📉 留学生数は実際に大幅減少

この政策転換の結果、カナダの留学生数は大きく減少しました。

カナダ政府によると、2024年末には約92万8,000人だったStudy Permit保持者が、2025年末には約69万1,000人まで減少。

1年間で約26%減少しています。

さらに2025年の新規Study Permit申請では、拒否率が**59%**まで上昇しました。

2024年は52%だったため、審査も明らかに厳しくなっています。

これは、カナダ政府が単純に「留学生を減らしている」のではなく、留学制度そのものの審査・管理を強化していることを示しています。


🔍 「本当に学ぶ学生」を重視する方向へ

カナダ政府が特に重視しているのが、留学生プログラム制度の健全性です。

2026年3月に公表されたカナダ監査総監(Auditor General)の報告でも、政府が留学生数の抑制には成功した一方、留学制度における不正やコンプライアンス対策には、なお改善の余地があると指摘されています。

一方で、入学許可証(LOA)の真正性を確認する仕組みも導入され、偽造・不正申請への対策が強化されています。

つまり、

「誰でもカナダへ留学できる」

という制度から、

「本当に学ぶ目的を持った学生を、適切な規模で受け入れる」

という制度へ移行しているのです。


🎓 では、日本人留学生にはどんな影響がある?

ここは非常に重要です。

今回の政策変更によって、カナダ留学そのものが難しくなったわけではありません。

むしろ、大学・カレッジなどへの正規留学を計画している学生にとっては、制度を正しく理解して準備することが以前より重要になった、と考えるべきでしょう。

特に2026年からは、公立教育機関の修士・博士課程についてPAL/TALが原則不要となるなど、大学院レベルでは一定の優遇措置も設けられています。

一方、

  • 短期プログラム
  • 一部のカレッジプログラム
  • 就労を主目的とするような留学
  • 卒業後の移民を強く意識した留学

などについては、以前より慎重に制度を確認する必要があります。


📊 2026年、カナダ留学はどう変わった?

2026年のカナダ政府の計画では、Study Permitの発給は最大408,000件

この数字には、新規留学生だけでなく、現在の学生や帰国・継続学生の延長分も含まれています。

新たにカナダへ入国する留学生については、約155,000人が想定されています。

つまり、今のカナダは、

「留学生を大量に受け入れて人口を増やす」

という以前の方向から、

「必要な人材・本当に学ぶ学生を選び、持続可能な規模に管理する」

という方向へ明確に変化しています。


🌎 カナダ留学は「なくなった」のではない

ここで誤解してはいけないのが、

「カナダは外国人留学生を歓迎しなくなった」

ということではありません。

カナダ政府は現在でも、優秀な留学生を将来の人材として受け入れる政策を続けています。

特に大学の修士・博士課程については、2026年からPAL/TALの対象外となるなど、優先的に扱われる分野もあります。

つまり、

留学生全体を無制限に増やす政策から、留学生の「質」と「分野」、「受け入れ規模」を管理する政策へ変わった

と考えるのが正確です。


これからカナダ留学を考えるなら

今後カナダへ留学する場合、

「カナダならビザが取りやすい」

「カレッジに入れば卒業後にカナダで働ける」

といった以前のイメージだけで留学先を決めるのはおすすめできません。

現在は、

✔ どの学校を選ぶのか

✔ どのプログラムを選ぶのか

✔ PAL/TALが必要なのか

✔ 卒業後のPGWPの対象になるのか

✔ 将来のキャリアにつながる教育内容なのか

✔ 留学期間中の生活費を無理なく準備できるのか

まで考えて留学計画を立てる必要があります。


✈️ 「カナダなら安心」から「目的に合ったカナダ留学」へ

カナダは今も魅力的な留学先の一つです。

しかし、留学生受け入れ政策はここ数年で大きく変化しました。

2024年以降の規制強化によって、留学生数は実際に大きく減少しています。カナダ政府が発表したデータでは、2026年に入ってからも新規留学生の入国数は大幅に減少しています。

だからこそ、これからのカナダ留学では、

「どこの国へ行くか」だけではなく、
「何を学び、卒業後に何を目指すのか」

を考えることが、これまで以上に重要になっています。

留学先を選ぶ際には、最新のビザ制度、学校の認定状況、プログラムの内容、卒業後の進路まで確認したうえで、慎重に学校を選びましょう。

カナダ留学は終わったのではありません。
「誰でも行けるカナダ留学」から「目的を持った学生のためのカナダ留学」へ、時代が変わったのです。

※本記事は2026年8月時点で公表されているカナダ政府(IRCC)等の情報をもとに作成しています。移民・留学制度は変更される可能性があります。出願時には必ず最新の政府公式情報をご確認ください。

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